事務所では、お客さんの相談を受けて1時間から、長いと3-4時間の話を聞いたりします。
一人一人、状況や人間関係が異なるので、まずは、じっくり話を聞いて、依頼人を理解することが求められます。
依頼人は、事務所に来る前に、友人に相談することもありますが、そうした相談がうまく働かないことも多いようです。
というのも、相談した友人は、世間一般で常識といわれる正義を押し付けようとしてしまうことがあるからです。
例えば、依頼人の配偶者が浮気をしていて、それを相談します。
友人は、それを聞いて、言います。
「もうそんな人とは別れたほうがいい。慰謝料取ってきっぱり縁を切るべきだ。その手伝いをしてあげよう。」
しかし事態はそんなに簡単ではありません。
配偶者と喧嘩別れすることは、子供の養育環境にとってマイナスになる場合も多く、慰謝料の請求で裁判になり1-2年の歳月を費やして、たとえ裁判に勝ったとしても、慰謝料は裁判の準備や弁護士費用に消え、後に残ったものは疲れきった気持ちだけ、ということにもなりかねないのです。
それよりは、配偶者を責める気持ちを抑えて、お互いの価値観や生き方の変化を理解し認め合いながら、これからのお互いの未来を建設的に設計していくほうが、いい場合もあります。
依頼人は、そうしてよく考えた上で、友人の提案を断ったのですが、友人には、それが納得いかず、せっかくの友情にヒビが入りかけてしまうこともあるのです。
ですので、夫婦関係のことを、友人に相談するのは、よくよく考えてからにしたほうがいいでしょう。
自分の人生が複雑なように、相手の現実も想像以上に複雑なものです。
「浮気は許されない。」
「不倫は罰すべきだ。」
というような紋切型の考えの押し付けは、複雑な現実に沿わないばかりか、相手の生き方を削り取って否定してしまうことにもなりかねません。
“一人の人間の中には広大な宇宙が広がっている”
と僕はいつも感じながら、相談者の言葉に耳を傾けています。